ESDやSDGsで異文化交流がなぜ大切なのか?(5)

比喩や多くの形容詞を使い誇張する表現が日常的な文化もあります。アメリカの文化はその最たるものでしょう。アメリカ人は感情をきちんと言葉で表現します。日本人の以心伝心と言う意識は美しいものですが、実は感情というのは以心伝心するものではなく、多くの場合は言葉で表さないと伝わらないものです。以心伝心するためにはそれ以前の信頼関係が必要なのです。

言葉を理解していても文化に影響されたコミュニケーションスタイルが上手くいかないのは、コミュニケーションスタイルの違いがあるからです。コミュニケーションスタイルを理解するうえで大切なものの1つが、「コンテクスト(context)」の概念です。コンテクストとは、 一般に「文脈」と訳されますが、コミュニケーションを取り巻くすべての環境、すなわち、物的·心理的·社会的·歴史的な背景を意味します。ホールは、このコンテクスト、とくに相手との関係性や状況により、言葉がそのままの意味で伝わる割合と、言葉の意味づけが相手により変わったり、明確な表現でなくても伝わる割合に注目しました。明確に言葉で表現されるメッセージよりもコンテクストに依存する場合を「高コンテクスト」、コンテクストよりも言葉の伝える意味がそのままメッセージとして解釈される割合が多い場合を「低コンテクスト」といいます。

たとえば、疲れた顔をした同僚に、「仕事を手伝おうか」と尋ねたとします。「いいよ。大丈夫」という返事に対して、高コンテクストでは相手との関係や状況に基づいて、額面どおり「大丈夫」なのか、「本当は手伝って欲しいのか」「余計なお世話なのか」、さまざまな解釈のなかから的確に相手の意図を読み取ろうとします。低コンテクストであれば、その言葉のとおり、相手に仕事を任せることでしょう。長年日常を共にしている家族であれば、明確な表現なしでも今までに蓄積された情報(コンテクスト)から、相手のことを理解できるでしょう。すなわち、人間関係が深ければ今までに蓄積されたバックグランドから、明確な表現をしなくても意味が伝わります。逆に、法廷や人間関係よりも契約が重視されるようなビジネスの場面では、言葉がそのままの意味で理解されることになります。コンテクストが低い場合は的確な言葉で明確に表現することでメッセージが正確に伝わるということがいえます。

日本人は高コンテクストの文化を持つといえます。先ほどは日本人の悪い点を書き連ねてしまいましたが、高コンテクストの文化というのは明らかに高級な文化だということがいえます。これは日本に長い歴史と特有で高級で特徴的な文化があることを意味しています。日本人は世界の中で特別な意味のある国民だといえます。

ホールは中国や日本などのアジア圏、ラテンアメリカ、ギリシアやイタリアなどの南欧諸国は高コンテクスト·コミュニケーションの傾向が、北米圏北ヨーロッパ周辺は比較的低コンテクストコミュニケーションの傾向がみられるとしています。ただ、それぞれの国内で宗教、地域、民族による違いもり、夫婦や長年の友人であれば、低コンテクスト·コミュニケーションの文化においても言葉で明確に表現する必要は少なくなるでしょう。

表情や態度など身体全体がメッセージを発する対面式のコミュニケーションや声の調子が確認できる言葉のメッセージによる電話とは違い、メールによるコニケーションは、表情や声の調子などから情報を読めない分、メッセージを誤解なく伝えるためには低コンテクスト・スタイルで 表現する必要があるでしょう。

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